今日は排便のメカニズムについてです。様々な消化液により粥状になった食物残渣から便を形成しつつ大腸内を移動していきます。便が直腸へ移送され、腸壁の伸展と内圧が亢進します。すると大脳に便意が伝わり、外肛門括約筋が弛緩、排便するというメカニズムです。
排便に大切なポイントとしては、腸管内で移動している便には一定量の食物残渣があること。水分を十分に含んでいること。大腸の蠕動運動が正常であること。直腸に便塊が移送された際に便意が感じられることなどです。
病歴聴取の際に、上記ポイントのどこがうまくいっていないのかを確認しながら適切に内服薬を調整していきます。現在はたくさんの便秘に対する薬がでています。単純に便秘と聞いて、腸管蠕動運動の促進のため、刺激性下剤が多用されるケースが多いのですが、実は耐性がついてしまい、長い年月をかけて次第に薬の効果がなくなってきます。腸管刺激性の薬は短期間、頓用で使っていくことを念頭に、他の浸透圧性下剤や上皮機能変容薬などで調整するといいでしょう。
一番大事なのは薬よりも生活習慣の見直しです。腸は自律神経で動いています。ストレスをためないように夜はしっかり寝て、規則正しい生活を行います。いも、豆、穀物や海藻類など食物繊維の多い食事をとり、水分をしっかりとりましょう。定期的な運動は、筋肉をつけ老化を防いでもくれます。
訪問診療の場合は、さまざまな病気により寝たきりや認知症の方が多く、排便コントロールに難渋されているケースが多々あります。便秘により腹痛が生じたり、食欲不振を起こすこともあります。虚血性腸炎による下血などのリスクも上がります。慢性便秘の患者様は半分以上が便意の消失がみられるとのことで排便がうまくいっていないことに気づいていないこともあります。できるだけ早期に施設スタッフやご家族からの病状聴取で気づき、薬の調整をしてあげることが大切です。
薬や食事のことなど気になることがありましたらなんでも気軽にご相談ください。