在宅医療における睡眠薬の使い方を講演してきました。☆訪問診療 内科 | 福岡の在宅医療・訪問診療「クリニック・ホームドクターズ」総合内科・糖尿病内科・消化器内科

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在宅医療における睡眠薬の使い方を講演してきました。☆訪問診療 内科

また一段と寒くなってきていますね~。皆様いかがお過ごしでしょうか?数年に一回の寒波だそうで、これも異常気象の一つなんでしょうか。まだまだコロナウイルス、インフルエンザの患者様、共に多い印象ですので、感染予防に引き続きお気を付けください。

さて、1月16日『在宅医療における睡眠薬の使い方』について講演してきました。

認知症、心、腎臓器障害や脳血管障害まで幅広い疾患に対応することになる在宅医療ですが、外来診療よりも、通院できなくなった患者さんと長く深く、関わっていきます。在宅医療はまさに、「様々な疾患、症状に対し患者さんに最後まで寄り添っていく医療」です。在宅医療をしていると、高齢者の不眠症に対する相談が多くあります。高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間が長くなります。今回は在宅医療における睡眠薬の使用例をお話させていただきます。

不眠症は、寝付きたい時間帯に寝付けない(入眠困難)、夜間の睡眠維持が困難(中途覚醒、早朝覚醒)、翌朝ぐっすりと眠った感じがない(熟眠障害)といった症状が 一か月以上続きます。国民のおよそ 5人に 1人が不眠症を有し、人口の5%以上が睡眠薬を使用しているそうです。高齢者の場合、夜間不眠,昼夜逆転などの不規則な睡眠覚醒、せん妄などの睡眠関連障害は極めて多く、同時に徘徊、焦燥、興奮、暴力行為などの行動障害も認めます。

これら睡眠関連の障害により、家族や介護者が患者さんより先に疲弊してしまうことがあります。そして、認知症のある高齢者の在宅介護を困難にさせ、自宅や施設での生活ができなくなる原因となることになります。病院から帰ってきたものの、介護者負担が大きすぎて再度入院となった患者さんがいかに多いことでしょう。

我々在宅医の使命として、希望される住み慣れた場所で希望される医療を受けて最期まで過ごしていただきたい。そのためにも、患者さん本人の幸せと、支える家族の思いに寄り添い、負担を軽減してあげること、在宅医療を継続していけるためにも、非常に重要となってくる部分です。

状態の悪い患者様や、認知症の患者様の診断の際にはどうしても施設の職員や家族からの問診に頼ることになります。介護上の負担感が大きい夜間の不眠症状だけではなく、昼間の眠気や夕方の様子、手足の動きなど細かく問診、観察することが診断には重要です。・眠剤の内服時間、種類など ・就寝時間 ・中途覚醒の有無 ・起床時間 ・昼寝の有無などを詳しく聞き取りします。

在宅医療の現場でも外来と同様に、薬物療法だけで睡眠障害を治療することは難しいと思います。認知症の患者さんであっても、質の良い睡眠は、身体を動かし、活発な日常生活があって初めて得られます。できる限りリハビリや運動、日光浴の機会を作り、身体を動かすことが大切です。そして、薬物療法としては、一般的に半減期の短い睡眠薬、徐波睡眠の増加作用を持つ抗うつ薬、催眠作用を有する少量の非定型抗精神病薬などを用いていきます。

当院の基本的な方針としては、ベンゾジアゼピンを極力処方しないようにしています。ベンゾジアゼピンは、依存性、認知機能の低下、せん妄の出現、筋弛緩作用により転倒や骨折、誤嚥性肺炎のリスクが上がるなどと在宅療養を続けるにあたり、問題が多いと感じています。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、筋弛緩作用が弱く使いやすいですが、それでも転倒のリスクは上がります。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬だから安全というわけではありません。

最近では、入眠、中途覚醒にも効果のあるオレキシン受容体拮抗薬を使うことが増えてきました。オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつです。オレキシン受容体拮抗薬は、その「オレキシン」の働きを弱めることによって眠りを促す薬です。従来の睡眠薬に高頻度で発現していた依存、耐性、反跳性不眠がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導するお薬です。

また、昼夜のリズムが安定しない患者様には、メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンを使用することもあります。メラトニンは体内時計に働きかけ、覚醒と睡眠を切り替えて、この薬も自然な眠りを誘う作用があります。メラトニンは脳の松果体から夜の20時頃から分泌されはじめ、深夜をピークに、朝になり太陽の光をあびると分泌されなくなります。メラトニン受容体作動薬はメラトニンの分泌を促すお薬になります。この薬も前出のオレキシン受容体拮抗薬と同じく、従来の睡眠薬に高頻度で発現していた依存、耐性、反跳性不眠がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導するお薬です。

不眠治療においては、長年にわたりBZ受容体作動薬がその主でしたが、近年、メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンや、オレキシン受容体拮抗薬であるレンボレキサントやスポレキサントなど、「毎日飲んで自然な眠気を促す薬」を使用する場面が増えています。自然な眠気を強めるため、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に効果があり、様々な基礎疾患を抱える在宅医療の現場では、非常に重宝しております。これまでの経験から、在宅医療の現場では、これらオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬は様々な基礎疾患を抱える在宅医療における患者様の不眠症へのfirst choiceとして使用しやすいと考えます。

訪問診療におけるお悩みやご相談などありましたらお気軽に当院までご相談ください。

 

 

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