在宅医療を検討する際に、ご家族から非常によく聞かれるのが「日曜や夜が不安です」という言葉です。昼間はまだいいけれど、日曜や夜などに具合が悪くなったらどうすればいいのか、救急車を呼ぶしかないのではないか、そんな不安を感じている方がとても多いです。ケアマネジャーさんや施設のスタッフからも、夜間対応について質問をいただくことがよくあります。
実際に在宅で生活していると、休日や夜間に状態が変わることは珍しくありません。発熱や呼吸苦、痛みの増悪、不穏やせん妄、転倒など、昼間よりも家族の負担が大きくなる場面が出てきます。特に高齢の方やがんの患者さん、心不全や呼吸器疾患をお持ちの方では、夜間の変化がきっかけで救急搬送になることもあります。
訪問診療では、こうした夜間の不安に対応するために、あらかじめ体制を整えています。定期的に診察しているからこそ、その方の普段の状態を把握しており、休日、夜間に何かあったときにも電話での相談や必要に応じた往診で対応することができます。普段からの関わりがあることで、「この症状ならまずこう対応してみましょう」「今は緊急性が高いのでこちらで診に行きます」といった判断がスムーズにできるのが特徴です。
ご家族にとっては、夜中に何かあったときに相談できる場所があるというだけで安心感が大きく変わります。実際には、すべてが往診になるわけではなく、電話でのアドバイスで落ち着くケースも多くあります。例えば、発熱時の対応、内服の使い方、様子を見てよいサインと受診が必要なサインなどを事前に共有しておくことで、無用な不安や救急受診を減らすことができます。当院では、事前に起こりうる病状の変化を考え、ご家族に対策方法の確認を繰り返し行なっています。
一方で、本当に緊急性が高い場合には、迷わず救急搬送が必要になることもあります。在宅医療だから救急車を使ってはいけないということは全くありません。その判断を一人で抱え込まなくてよいという点も、訪問診療の大きな役割です。医師とつながっていることで、適切なタイミングでの救急搬送につなげることができます。
また、事前にどこまでの医療を希望するのかを話し合っておくことも重要です。延命治療をどこまで行うのか、自宅で最期まで過ごしたいのか、それとも状態によっては入院を希望するのか。こうした意向を共有しておくことで、夜間の急変時にもご本人やご家族の考えに沿った対応がしやすくなります。当クリニックでは、初回診療時にできるだけ確認しておくようにしております。介入時に意思決定されていない場合でも、診療時にアドバイスや意見交換を行いながら、適切な選択ができるように寄り添って対応させていただいております。在宅医療は単に診察をするだけでなく、こうした人生の最終段階に関する意思決定を支える役割も担っています。
施設に入所されている方でも、夜間の対応は同様に重要です。施設スタッフだけで判断するのではなく、訪問診療の医師と連携することで、より安心して対応できるようになります。特に夜間は人員が限られるため、あらかじめ連携体制を作っておくことが安全につながります。施設は種類によって、夜間看護師が常駐されているところもあれば、介護者のみの施設もあります。うまく連携することで患者さんの不安を最小限にすることを心がけています。
夜間の不安があるから在宅医療は難しいと考える方もいますが、実際にはその不安を減らすための仕組みが訪問診療にはあります。通院ではカバーしきれない時間帯をどう支えるかという視点で考えると、在宅医療の価値はより実感しやすいかもしれません。当院では、スタッフ皆で当番制で患者さんを支える仕組みを整えています。医師も一人では24時間365日体制は支えきれません。チームで夜間、休日と交代で支えることで1000名以上の患者様の絶え間ない医療を継続できています。
在宅医療や訪問診療を検討する際には、日中の診療内容だけでなく、夜間や緊急時の対応体制についてもぜひ確認してみてください。不安に感じていることをそのまま相談していただくことで、その方に合った体制を一緒に考えることができます。夜の不安を一人で抱えないこと、それが在宅医療の大きな意味の一つだと思います。